防錆紙について

防錆紙鉄を錆から守る防錆紙・防錆フィルム

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※現在無料公開中。防錆梱包の種類や特徴、防錆試験方法など

防錆紙とは

防錆紙は錆を防ぐ防錆剤をコーティングした梱包資材です。鉄や金属の製品を錆から守るために使います。
防錆技術の歴史は、シェル社のジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト(DICHAN)の特許取得から始まりました。これは最終的にVPI 260として実用・商品化されています。 特に米軍によって、防錆粉末、防錆紙、防錆溶液、防錆スラッシング化合物などで、多種多様な金属部品を錆から守るため広く採用されていました。
しかし、安全性や健康への懸念によりDICHANは防錆剤として使われなくなりました。
現在、市販されているVCI化合物は、より安全性の高い、中程度の強さの塩基と弱い酸のものが一般的です。 塩基はアミン、酸は亜硝酸、カルボン酸などが代表的です。
第二次世界大戦中から戦後に防錆技術の研究や体系化が各地で進みました。アメリカでは1952年に米軍仕様書であるMIL-P-116Aが定められ、MIL-P-116Jまで8度の改訂を経て1996年まで運用されました。1996年には米軍規格MIL-STD-2073-1となり受け継がれています。日本ではMIL-P-116Bを参考に日本工業規格(JIS Z 0303)錆止め包装通則が1959年(昭和34年)に定められました。イギリスでは1944年B.S.(British Standard)によって腐食に対する金属表面の保護や防錆剤について言及されています。

防錆紙の歴史防錆梱包の始まりは第二次世界大戦の最中の米軍によるものだったといわれています。当時使用されていた兵器の多くは鉄や金属でできています。米軍は、日本という高温多湿の環境において鉄を錆から守る対策を取らざるを得ませんでした。想定外の湿度や高温な環境において兵器は次々と錆びていき、その対策のために防錆剤や防錆梱包材が開発されました。そして開発した防錆剤・防錆梱包材をより有効に使用するための方法も研究されました。

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防錆紙①

防錆紙①鉄用

弊社の防錆紙の製品例です。

防錆紙②

防錆紙②鉄用

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防錆紙③

防錆紙③鉄用・非鉄金属用

弊社の防錆紙の製品例です。

防錆フィルム

近年の環境保全の観点から、防錆紙ではなくポリエチレンフィルムを母体とした防錆フィルムを開発。防錆剤はフィルム内部に練り込まれており、密封梱包後徐々に梱包内部へ気化、鉄表面へ吸着します。素材はポリエチレンの為、御使用後は粉砕溶解すれば、樹脂原料として再生することが可能です。また紙粉等を嫌う精密機器の輸出梱包等にも最適です。

防錆フィルム①

防錆フィルム①

弊社の防錆フィルムの製品例です。

防錆フィルム②

防錆フィルム②

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防錆フィルム③

防錆フィルム③

弊社の防錆フィルムの製品例です。

防錆紙の効果とメカニズム

「防錆紙に含浸されている防錆剤が徐々に気化し、防錆紙に包み込まれた鉄の周囲を防錆剤が充満する」というのが防錆紙のメカニズムです。鉄鋼の場合は、まず防錆剤が空気中に揮発します。これは、分子の単純な進化を伴う場合もあれば、化学物質がまず解離して、それから揮発する場合もあります。その後、分子は密閉された空間を拡散し、一部の分子は保護すべき金属表面に付着します。 分子が金属表面付着すると、2つのパターンが考えらます。 まず、分子は金属表面に吸着し、イオンに対するバリアを形成し、水に置換されます。2つめのパターンは、金属表面の凝結水層が関与します。 防錆剤の分子は凝結水層に溶解し、pHを上昇させます。アルカリ性のpHは、鋼の耐食性に有益な影響を与えることが示されています。
銅の場合も鉄と同じように、インヒビターが進化していくメカニズムで始まります。 銅の表面には、しかし、インヒビターと保護的である銅ベンゾトリアゾール錯体を形成します。
蒸気圧は、VCIの効果において重要なパラメータです。最も好ましい圧力範囲は、室温で10-3〜10-2 Paです。圧力が不足すると保護層の形成が遅くなり、圧力が高すぎるとVCIの効果が短時間に限定されます。

防錆紙のメカニズム

防錆紙の使い方

最適な防錆を行うために防錆紙を使用する前に考えるべきポイントをまとめました。

①金属の種類と表面処理
金属は種類によって耐食性や強度が異なります。金属の特性に合わせて防錆剤や梱包方法、前処理の有無を検討する必要があります。対象の金属や合金がどのような配置で組成されているか、非金属物質として使用されている材料はあるかを事前にチェックしておきましょう。金属の種類と表面処理(めっきや塗装など)によって防錆梱包の前に洗浄などの作業が必要か否か、洗浄をどのように行うべきかも変わってきます。
②鉄・金属の輸送環境
鉄・金属がどのように輸送されるかによっても最適な防錆方法は異なります。輸送中や保管場所の温度、また湿度はどれほどあるかということは防錆方法を決める前に必ず確認しましょう。輸出する場合は、輸送経路・輸出先の気候や風土についても考慮する必要があります。また空気のきれいな環境になれていると忘れてしまいがちですが、二酸化窒素二酸化硫黄、海塩粒子、煤や塵は腐食を速める場合があります。輸送環境・保管環境の空気の汚染状況も考慮しましょう。輸送時一時的に屋外に置かれる場合は、風雪防止のための防水処理や、防塵処置が必要とされるケースもあります。
③防錆の費用や工程
防錆方法には、防錆油の塗布、防錆剤の使用などの選択肢があります。その中で最も効率的に防錆できる方法を考える必要があります。防錆紙や防錆フィルムを使用した防錆梱包なら、防錆と梱包が1工程で完了し、再度封をすれば開梱後も防錆効果を維持できます。さらに防錆油のようにべたつきや汚れが気にならず、複雑な形状の製品にも気化した防錆剤がしっかりと錆を防ぎます。防錆油の塗布や除去の作業も不要になるため、省工程化にもおすすです。塗布・除去・処理廃棄のための設備装置も不要になります。

防錆紙の使い方を3ステップにまとめました。

防錆紙の使い方①洗浄・汚れ除去
防錆効果を最大に発揮させるため防錆梱包を行う前に汚れを取り残す作業を行います。洗浄を実施し指紋や油分などの汚れを除去しましょう。金属表面に汗や指紋などが付着しているとその部分に防錆剤が行き渡らなくなってしまいます。
防錆紙の使い方②梱包・包装
汚れをとった金属を梱包・包装します。気化性防錆剤は使用するタイミングで開封しますが、防錆紙の場合一度封を開けても再度封をすれば使用できます。防錆紙をなるべく金属製品に近づけた状態で梱包し間に別のものを挟まないようにしましょう。密封状態を保つのも重要です。
防錆紙の使い方③梱包後の管理
梱包後は防錆梱包資材の破れや空気漏れに注意しましょう。また結露・水濡れ防止や湿度管理も重要です。

防錆紙のメリット

防錆紙、防錆フィルムを使用するメリットをご紹介します。
防錆紙は常温で揮発するため、鉄などの金属を包むだけで防錆効果が得られます。
そのためオイルなどを使用する場合と比較して、拭き取りの手間がなく省工程です。
防錆剤が開発され、最初に多く採用されたのが防錆紙でした。輸送や保管のために鉄材を守るために使用されます。その後、ポリエチレンフィルムにインヒビターを組み込んだ防錆フィルムが開発されました。防錆フィルムで包まれた金属の表面に防錆分子が吸着し、酸素、水分、塩化物などの腐食成分に対して目に見えない分子バリアーを形成ます。
包装状態を解くと、防錆剤は気化して自然と空気中に浮遊し拭き取ることなく製品を取り出し使用できます。
ポリマーフィルムは静電気を除去する特性があり、電子機器の包装材料に適しています。大型機器や資産を屋外に長期保管する場合は、防錆フィルムの基材として熱収縮フィルムが採用されることもあります。電子機器の輸送・保管時の保護にポリマーフィルムを使用する場合、静電気放電(ESD)防止、防錆、使用後の廃棄まで考えなければなりません。近年では環境配慮の観点から、生分解の防錆フィルムも登場しました。

防錆製品の比較 防錆フィルム 防錆紙 防錆油
防錆作業工程  取り扱いが簡易である。ヒートシールに適さない。防錆と包装が両立。 取り扱いが簡易である。ヒートシールには適さない。防湿剤との兼用可能。 防錆油の塗布、除去工程が必要。防湿剤との兼用が望ましい。
防錆対象 鉄、非鉄(銅・亜鉛メッキ・アルミニウムなど) 鉄、非鉄(銅・亜鉛メッキ・アルミニウムなど) 鉄、非鉄(銅・亜鉛メッキ・アルミニウム)
防錆製品の仕様 内容物のサイズや用途に合わせて製造可能。 即効性が高い。強度や折り曲げ性など紙の梱包資材と同等の性質が得られる。 製品に合わせて塗膜可能。
防錆製品の透明性 透明性が高く内容物の梱包したまま中身を確認できる。 紙を基材とするため透明性はない。 ×
防錆製品の安全性 燃焼によって発生する有毒ガスがない。 紙ごみとして廃棄可能。化学物質は少ない。 作業環境を汚してしまう。また原液の処理が必須である。

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防錆紙・防錆フィルムのメーカー

堀富商工株式会社は、気化性防錆紙、防錆フィルムのメーカーとして長年の実績があります。
弊社は明治18年(1885年)大阪堺で創業しました。当時の堺は日本で2番目の紡績工場があり、材料となる綿花を麻袋に詰め込んでインドから輸入していました。当社の創業者は紡績工場で綿花を取り出した後の廃棄用麻袋に目を付け、紡績工場から一括購入しました。麻袋を繊維に戻した糸でカーペットを製造し、アメリカに輸出したことから事業が始まりました。
また麻織物や紙にアスファルトを塗工した官営八幡製鉄所の鉄コイル用防水シートの製造や、日清日露戦争、第二次世界大戦においては、政府の要請により、軍服の縫製、銃器の防錆・防湿包装資材のメーカーとしても活躍。創業当時の天然素材から化学原料素材へと変化しましたが、「織る・塗る・貼る」という核心技術は現在に至るまで磨き続けて参りました。現在は大阪府堺市・福島県いわき市の東西2製造拠点で、せま幅から3.7mまでの超広幅ラミネート、フレキソ印刷、液剤塗布コーティングを行っています。

気化性防錆紙、防錆フィルムのメーカーをお探しの方、防錆梱包資材についてのご相談はお気軽に以下のフォームよりお問い合わせください。

当記事は防錆の専門知識を有する担当者の監修を受けています。
記事監修者プロフィール
所属:堀富商工株式会社 品質管理グループ
資格:防錆管理士(防錆包装科) 認定番号:15155
氏名:小川浩之